ずっと楽しみにしていた、
ヌメ革の鞄が届いた。
箱を開けて、真っ先に思った。
「わあ、白い!!」
キャメルでも、ブラウンでもない。
まだ何色にも染まっていないような、淡い肌色。
つるんとした革に、金色の金具。
二つのベルトと、大きな前ポケット。
昔の学生鞄のような、
どこか懐かしい佇まいをしている。
想像していたよりもずっと可愛くて、
しばらく眺めていた。

人と一緒に育つ革
ヌメ革は、使う人と一緒に育っていく革だ。
日を浴びるたびに、少しずつ色づく。
手で触れたところには艶が生まれ、
小さな傷やシワも、その人だけの表情になっていく。
淡い肌色から、蜂蜜色へ。
蜂蜜色から、深い飴色へ。
同じ鞄でも、数年後には
今とはまったく違う姿になっているのだろう。
それを知ってから、
この鞄がますます愛おしくなった。
はじめての小さな変化
届いた日、初めてのメンテナンスをした。
柔らかい布にほんの少しだけオイルを取り、
革の表面へ薄く馴染ませる。
そのあと、短い時間だけ日光に当てた。
翌日は、この鞄を持って出勤した。
たった一日なのに、
すでにほんの少しだけ色が深くなっている。
帰ってから優しく布で磨くと、
革の表面に、うっすらと艶が生まれた。
「少し育ったね。」
そう言いながら、また眺めた。
ほんのわずかな変化なのに、
見つけるたびに嬉しくなる。
磨いた鞄を眺めながら一杯飲むのも、
今後の愉しみのひとつになりそうだ。
今だけの色
最初は、早く飴色になってほしいと思っていた。
もっと深くて、落ち着いた色になれば、
私の好きなツイードや、ヴィンテージの服にも
きっとよく似合う。
だから、早く育たないかな、と
何度も鞄を眺めていた。
けれど、考えてみれば、
この淡い肌色でいられるのは今だけなのだ。
まだどこへも出かけていない色。
たくさんの日差しにも触れていない色。
これから私と一緒に出かけ、
私の手に触れられながら、
少しずつ変わっていく。
今の色も、いつか振り返れば
きっと懐かしく思うのだろう。
時間が色になる
革の鞄を育てるということは、
きれいなまま守り続けることではないのかもしれない。
曲がるところにはシワができる。
持ち手は、ほかの場所より早く濃くなる。
ふとした瞬間に、小さな傷もつくだろう。
それでも、その一つひとつが
一緒に暮らした時間の跡になっていく。
新品のときにはなかった艶も、深い色も、
毎日の積み重ねがつくってくれる。
時間が、色になる。
そう思うと、
古くなっていくことが少し楽しみになった。
私の暮らしと同じ歩幅で
完成したものを手に入れるのではなく、
これから自分の手で育てていく。
急いで理想の色にしなくてもいい。
今日浴びた光は、今日の分だけ。
今日触れた手の温度も、今日の分だけ。
ゆっくり、ゆっくり。
私の暮らしと同じ速さで、
この鞄は育っていく。
数年後、深い飴色になったこの子を見たとき、
今日の淡い肌色を思い出すのだろう。
届いた日の嬉しさも。
初めて一緒に出かけた日のことも。
布で優しく磨きながら、
小さな艶を見つけた夜のことも。
いつかすべてが、
この鞄の色になる。
これから、たくさんの時間を一緒に歩こう。
暮らしの中で少しずつ、
世界にひとつだけの鞄へ育つように。
またひとつ、
暮らしの可愛い仲間が増えたことが嬉しい。


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